多発するコンタクトレンズによる深刻な合併症

 コンタクトレンズはすべて異物であり、無害なコンタクトレンズは存在しません。日本コンタクトレンズ学会では、日本眼感染症学会と共同して、入院治療が必要な重症のコンタクトレンズ合併症について、全国の眼科施設の協力を得て調査を行っています。その集計結果を報告します。
 調査は全国224箇所の眼科施設において、平成19年4月から1年間の間に、コンタクトレンズ装用が原因と考えられる角膜感染症のために入院治療が必要となった症例を対象として行われました。
 調査期間中に入院が必要となった重症症例数は228例。うち男性が126例、女性が102例と、女性が多いはずのコンタクトレンズ使用者の中で、重症合併症は男性が多い点が目立ちます。症状(複数回答可)のトップ3は、眼痛88%、充血85%、視力低下67%。受診時視力は、52%の症例が0.1未満(矯正不能)と悪く、病原菌検査の結果、緑膿菌、アカントアメーバなどが多く検出されました。
 3ヶ月後の視力は21%の症例で0.1未満、21%の症例で0.1以上0.6以下。いずれも角膜に残った濁りなどのために眼鏡やコンタクトレンズを使用しても視力が出なくなっています。つまり、約1/5の症例が視力表の一番上も見えない結果となり、半数近い症例に著明な視力低下の後遺症が残ってしまいました。
コンタクトレンズの使用状況を調べると、表1のようにレンズケアがちゃんと行われていない症例が多く、表2のようにコンタクトレンズの使用期間や定期検査間隔も正しく守られていない例が目立ちました。
 今回の調査は、全国の日本眼科学会専門医制度認定施設のうち、調査協力を得られた224施設のみを対象としたものです。重症であっても入院せずに治療を行う場合もあるため、全国で実際に発生している重症例はさらに多いものと考えられます。
 安心してコンタクトレンズを使用するには、正しいレンズケア、正しい使用態度、そして定期検査の励行が必要です。眼科を受診して現在の目やコンタクトレンズの状態、レンズケアの適否などについて指導を受けてください。


表1:重症例のレンズケアの状態

レンズのこすり洗いを毎日していない 77%
レンズの消毒を毎日していない 51%
レンズケースの3ヵ月ごとの定期交換をしていない 73%

表2:重症例のレンズ使用・受診状況

1日使い捨てCLを1日を超えて使用している 50%
2週間交換レンズを2週間を超えて使用している 60%
終日装用レンズを連続装用(就寝時も装用したまま)している 27%
定期検査の間隔が3ヵ月を超える 76%
定期的な検査をほとんど受けていない 35%
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