平成22年3月18日

関係各位

 国民生活センターの報告「ソフトコンタクトレンズ用消毒剤のアカントアメーバに対する消毒性能-使用実態調査を踏まえて-」(平成21年12月16日公表)に関する報道について


日本コンタクトレンズ学会 理事長 木下 茂


国民生活センターから平成21年12月16日に「ソフトコンタクトレンズ用消毒剤のアカントアメーバに対する消毒性能―使用実態調査を踏まえてー」という報告がなされました。しかしながら、一部のマスメディアの報道が適切ではなかったと考えられましたので、これに関する日本コンタクトレンズ学会の見解を発表いたします。

重症な角膜感染症はコンタクトレンズのケア方法に問題があるユーザーに多い
日本コンタクトレンズ学会と日本眼感染症学会は共同で、コンタクトレンズによる角膜感染症の全国調査を平成19年(2007)年4月1日から行っています。その結果、入院治療を必要とするような重症の角膜感染症(多くのアカントアメーバ角膜炎を含む)を生じた症例は、コンタクトレンズのケア方法に問題があるユーザーに多いことが判明しました。アカントアメーバは細菌を貪食して増殖しますから、アカントアメーバがレンズケースの中で繁殖するには、餌となる細菌の存在がベースとして必要です。このような汚染は、こすり洗いをしていない、レンズケースを洗浄していない、消毒液を交換せずに注ぎ足して使用している、手洗いをせずにコンタクトレンズのケアを行っているといった、不適切な使用方法で生じるものと考えられます。

ソフトコンタクトレンズ用消毒剤の優劣の問題ではない
先にも触れましたように、一部の報道では、試験に用いられたMPS(Multi Purpose Solution)の8製品、過酸化水素水の2製品、ヨード剤の1製品の中で、MPSの6製品についてはアカントアメーバに対する消毒力が不十分で、アカントアメーバ角膜炎の発症の危険性が高いと誤解されるような内容となっています。しかしながら、今回の国民生活センターの試験で消毒力が強いと報告された製品のユーザーにも、アカントアメーバ角膜炎発症はみられます。また国民生活センターの報告書にもソフトコンタクトレンズ衛生状態調査としてレンズケースを回収してレンズケース内の微生物の汚染を調査し、約60%のレンズケースから細菌が検出されたと記載されています。もともと、MPSの消毒力には限界があるのです。実際、厚生労働省のソフトコンタクトレンズ用消毒剤の承認基準では、アカントアメーバに対する消毒力の試験方法とその承認基準は明確に定められていません。これは、アカントアメーバに対する消毒力の評価基準が国際的に確立されていないためです。米国のCDC( Centers for Disease Control and Prevention)が定めた実験プロトコールによれば、たった100個のアカントアメーバであっても、これを完全に除去できるMPS製剤は存在しないのです。最も大切なことは、レンズの擦り洗いとすすぎを励行することで、これにより、どの消毒剤でも一定の感染抑止効果が得られると考えられます。

消毒剤の誤った使用方法は消毒力の低下を招く
ソフトコンタクトレンズ用消毒剤にはMPS、過酸化水素水、ヨード剤の3種類がありますが、いずれの製品でも誤った使い方をすると、顕著に消毒力が低下し、アカントアメーバ角膜炎のみならず、多種多様の角膜感染症を招くことが知られています。消毒剤ではなく、むしろ使用方法に問題があるのです。今回の国民生活センターの調査でも、ソフトコンタクトレンズ用消毒剤の使い方に問題のある人が多く、また、コンタクトレンズ装用による目のトラブルを経験していたにもかかわらず、定期的に検査を受けていない人が調査対象の約半数を占めたと報告されています。医師の指導もなく、また使用説明書を読まないために、誤った使用方法を正しい方法と思いこんでいる人の数は、実際の現場では決して少なくないのです。

角膜感染症の予防には、正しいレンズケアが必須である
強い消毒力を持ったソフトコンタクトレンズ用消毒剤においても、コンタクトレンズ、レンズケース、レンズケア製品のボトルの汚染を100%なくすことは困難です。各コンタクトレンズユーザーがコンタクトレンズによるトラブルを招かないために、以下の注意点を守り、コンタクトレンズとレンズケースを常に清潔に保って頂きたいと考えます。

  • 1 コンタクトレンズを使用する際には、眼科専門医の処方と指導を受け、定期的に検査を受ける
  • 2 手を十分に石けんで洗ってからコンタクトレンズを取り扱う
  • 3 コンタクトレンズをはずした後に、必ずこすり洗いを行い、十分にすすぐ
  • 4 レンズケースは毎日しっかり洗い、自然乾燥させる
  • 5 レンズケース内の消毒液は毎日新しいものに交換する
  • 6 レンズケースを定期的に新しいものに交換する
  • 7 レンズケア用品は開封後すみやかに使う(長期間の使用は危険である)
  • 8 コンタクトレンズ、レンズケア用品は清潔な場所に保管する
  • 9 コンタクトレンズのすすぎは、こすり洗いの後だけではなく、装用直前にもう一度、レンズケースから取り出した後に、十分量のMPSあるいは保存液(すすぎ液)ですすぐ

重要なのはコンタクトレンズユーザーの自覚と自己防衛である
平成21年12月16日公表の国民生活センターの報告「ソフトコンタクトレンズ用消毒剤のアカントアメーバに対する消毒性能-使用実態調査を踏まえて-」には、実に多種多彩の内容が盛り込まれています。マスコミ報道では、その一部のみが報道され、多くのコンタクトレンズユーザーに誤解を招きました。今回の国民生活センターの報告の本来の主旨は、コンタクトレンズによるトラブルを減少させるために、個々のコンタクトレンズユーザーが適切なコンタクトレンズケア(ソフトコンタクトレンズ用消毒剤を含む)を理解し、それを実践していくことを広く啓発することにあったと考えます。
マスメディアの皆様には、日本コンタクトレンズ学会の今回の発表の主旨をご理解いただき、ご高配をいただければ幸甚に存じます。